DUNE   1993/04/27(再発:2004/04/21)
2004再発版

旧版


Dune
陰鬱な単色のイメージの中に、ガラスのような透明で繊細な輝き。記念すべきアルバム第1段です!
一掻きでその場を支配するギターの音色、メロディアスで構成の中核を成すベース、リズムの枠を飛び越えた華のあるドラム、そして説明不要な魅惑のボーカル。今のラルクに繋がる重要な要素はこのときに既に出揃っている感じもしますが、何と言っても圧倒的に足りないのはポピュラリティ! 後追いファンで「Tierra」までは遡れても、この壁に弾かれた方も多いのでは? 曲の展開は複雑で分かりにくいし、歌詞はドラマチック過ぎて共感しにくいし!(笑) ただ、そこを踏まえておけば、意外とすんなりと聴けるのではと…。むしろ、どんな曲も「売れ線」に変えてしまう脅威のアレンジセンス(笑)も発揮されていないので、曲そのもの、楽器の音色そのもの、メロディ自体の持つ美しさを味わえます。

サウンドは暗いのに透明感があり、それぞれが自己主張しながらも、丸みがあって豊かなボーカルを引き立てている印象。ほとんどメンバーの音のみで構成されており、それでいてこの広がりと深みは驚異的。音色やメロディ、リズムの隅々まで神経が行き届いていて、元々のポテンシャルの高さが窺えます。
歌詞は大別して2種類。曲調から喚起された物語性の強い作品と、hydeさんの精神世界に元々根付いている原風景とも言うべきもの。そのため、当時の心情を推し測る、といったような解釈の仕方は難しいですね。ただ、全体的に暗い色に染まっており、その辺りは若さ故の悲しみという気もします。一人称は「私」。最近のhydeさんは曲中で「僕」を使うことが多いので、ちょっと違和感があるかもしれません。

タイトルの「DUNE」は「砂丘」という意味。アルバムの代表曲「Dune」と同じ言葉ですが、tetsuさんが「同じものか分からない」とおっしゃっていたように、表現している意味は別物な気もします。例えば、曲名「Dune」は形を変える儚いものの喩えとして用いられていますが、アルバム名「DUNE」は形を変えても存在しつづけるタフなもの、とか? 真相は分かりませんが、この先ラルクの辿る運命を思えば、そんな意味を含んでいたと言われても納得してしまいます。
また、かつてhydeさんは「desert(砂漠)という語感がピンとこなくてduneにした」というようなことをおっしゃっていましたが、「何もない荒涼とした風景」であり、「原始」という意味なのかもしれません。まさに原石のような作品。
注目曲

1.Shutting from the sky  hyde:詞/L'Arc-en-Ciel:曲
アルバムの1曲目に相応しいインパクト。まず前奏の昂揚感が凄い! 華やかに広がっていくギター、フィルの多いドラム、ドライブ感満載のベースは今聴いてももちろんカッコよくて、ファーストアルバムながら既にラルクの顔をしてますね(笑) ボーカルは地声の中高音に若さが感じられて、新鮮な印象。
原曲となったのは、初代ギタリストhiro作曲の「Claustrophobia」という曲。柔らかくてネガティブな印象の強い原曲に比べ、ほとんど別物のようにアレンジされてます。

2.Voice  hyde:詞/ken:曲
オムニバスアルバム「GIMMICK」にも収録された初期ラルクの代表作の1つにして、kenちゃんがラルクのために作った最初の曲! 曲の作りは割と単純で分かりやすく、逆に特徴がよく出てます。この頃から既にベースはメロディアス、ギターは音を厚くすることと雰囲気作りに勤しんでいます(笑)
空に向かって放たれるようなメロディにhydeが乗せたのは「目の前の扉は開かれて 少しの未来を見せている」という印象的な言葉。今後いくつもの名曲を生み出していく黄金コンビの、最初の出会いですv

3.Taste of love  hyde:詞/ken:曲
低音にゴリゴリと展開するフレーズが印象的な、ベース主役の1曲。情熱的というにもあまりに激しい言葉に驚かされますが、そんな歌詞が全然浮かないハードで劇的な曲調。ベースほどは目立ってませんが、ギターとドラムのプレイも激しくて堅実で聴き応えがあります。
でもなんか、kenちゃんのギターソロはセンスが良くてカッコいいんですけど、この曲に乗るにはちょっと若々しい印象で…密かに微笑ましいですねv 逆にhydeのボーカルは艶かしく迫力があり、曲にピッタリ合ってます(笑)

4.Entichers  hyde:詞曲
たとえ愛しい相手に忘れられていたとしても、待ちつづけることこそが存在意義、というまさに狂おしい歌詞。曲調は内容ほどハードではなく、アコギを重ねたエキゾチックでhydeさんらしい不思議な雰囲気。このアルバムの中では「お口直し」といった役割かな?
ベースは音が柔らかく篭っていて、スライドも多く、ちょっとコントラバスみたいな印象。間奏に挿入されている金属音は誰のアイディアなのか分かりませんが、アナログな音の中にあって異質で不穏で耳に残ります。

5.Floods of tears  hyde:詞/tetsu:曲
シングルにもなっただけあって、このアルバムに有っては救いのように聴きやすい曲です(笑) 切ないけどほのかに明るさがあってメロディアスという、このあとのラルクではお馴染みとなる路線の原型。ここではアルバムのカラーに溶け込んではいますが、てっちゃんのポップセンスが感じられます。
やっぱりベースが耳に入ってきますが、ギターもアナログな感じの独特の音色で、曲の持つ優しい雰囲気を引き立ててますね。また、所々にうっすらと挿入されているキーボードっぽい音も芸が細かいです。

6.Dune  hyde:詞/tetsu:曲
やっぱりてっちゃんはこの時から、他のメンバーとは違うセンスを持ってますね。DUNEの中にあって飛び抜けてキャッチー、パワーのある1曲です。
ドラムとキーボードのみの冒頭は、ちょっと異色でダイナミックで華やか。ガラスの砕ける音に続く演奏は、3人がガッツリ噛み合って疾走感のあるグルーヴが気持ちいいです。特にベースが凄い! ギターやドラムと自在に絡み、曲を1つの生き物のように纏めています。こんな演奏を当時のインディーズでやってたんだから…レベル高すぎ。ボーカルは明るい曲でもないのに、どことなく楽しげで生き生きしてますv

7.Be destined  hyde:詞/ken:曲
まず歌詞がホラーなのですが、それを受け止める曲も厭味なほど不気味。微妙に揺れのある音、ギターとベースの不吉な旋律、ページを繰る音と謎の金属音…ええとこれは、手に杭が打たれる音…なんですかね?やっぱり…。メチャメチャ怖いです。間奏の疾走感のあるギターは一瞬明るさを見せ、主人公がもう1つの人生を夢想したかと思いきや、すぐに今の人生に連れ戻されてしまう。歌詞と曲がピッタリとリンクした、恐ろしくもドラマティックな1曲。
原曲は、kenちゃんとてっちゃんが、ラルク以前に一緒にバンドを組んでいたときのものだとか。…さすがにこんな歌詞が乗るとは、曲自体も想像していなかったに違いない(笑)

8.追憶の情景  hyde:詞/L'Arc-en-Ciel:曲
派手な曲ではありませんがメロディが美しく、気を使ってアレンジされた完成度の高い曲。hydeの低音はこの頃は丸くて濃厚な印象。Aメロでたっぷり味わったら、サビは切なさを掻き立てるような広がりのある中高音へ。
楽器の持つ音色、特にギターの音色で曲の雰囲気を作っていますが、よく聴くと弦やピアノっぽい細かな装飾音が挿入されています。原曲はhiro君の「Call to mind」という曲なので歴史が長いのかと思いますが、むしろこの先の作品を感じさせるアレンジですね。

9.As if in a dream  hyde:詞/ken:曲
初期作品群に燦然と輝く名曲! 市川CLUB GIO行ってこの曲流れてきたら…やっぱりおかしいでしょ(実際演奏したか知らないけど/笑) あまりに洗練されている、スケール感が有り過ぎる、カッコ良過ぎる。ソロ活動開始にあたりhydeさんに「超えたい」と言わせた曲であり、GLAYのTAKUROさんが「ラルクで一番好き」と仰った曲でもあります。
まずギターが一貫して幻想的で美しい。特に印象的なのは冒頭で、一瞬で曲の世界に引き込まれます。このフレーズは、てっちゃんもkenちゃんに教えてもらって真似をしたとか…(笑) また、長いギターソロに被って音色の違う短いギターソロが入ってくる部分も、駄目押しのように昂揚感を煽りますね。あと、比較的新しい曲な所為か、ドラムが凄くsakuraらしいです。この曲には多分、初代ドラマーperoちゃんのバージョンは存在しないんじゃないかな? とにかく、音のバランスもバンドとしてのバランスも良く、息がピッタリ。聴いていて気持ちいいですv

10.失われた眺め  hyde:詞/ken:曲
ほぼピアノとボーカルのみで構成された曲。最後にちょっとだけ雷鳴を思わせるドラムが入ってます。
呼吸音が多めに録られていて、歌っているのを近くで聴いているかのよう。力まず、感情がダイレクトに封入されていて、ラルクの中ではこの後あまり見られなくなる歌い方ですね。本来のアルバムの最後の曲で、長いため息を誘うようなラスト。


再発版ボーナストラック

11.Floods of tears(single version)  hyde:詞/tetsu:曲
う〜ん…先にアルバムバージョンを聴いてしまっただけに、難癖つけたくなりますね。まず、加入直後と思われるkenちゃんのギターがイマイチ! 音が浮いちゃってて、音色の魔術師は眠ってる感じです。ギターソロも一生懸命だけど、今のセンスは半分くらいしか発揮してないなって…なんかkenちゃんの音にばっかり注耳しちゃいますよ!(笑) まあ先入観無く聴けば、ちょっと大人しいけどこれはこれでいいのかな?
hydeのボーカルは歌い方が全然違いますね。ドラムは初代ドラマーのperoちゃんの音が入ってます。

12.夜想花  hyde:詞/ken:曲
濃密な夜の闇を感じる曲。かなりのスローテンポで、当時のhydeのねっとりとした歌い方も、曲調に合ってます。こちらも初代ドラマーのperoちゃん。
初期の作品群の中でもかなりの異色。パーカッションやシンセサイザーがふんだんに挿入され、ドラムは印象的な残響を残し、かなり作られた音という印象。ギターはアコギを重ね、ベースは低音を補強するのみ。徐々に増えていく不協和音が感情の昂ぶりの表現で、歪みが限界に達した瞬間、ふと冒頭の調子に戻って淡々と終わる。なんかkenちゃんの曲の中でももちろん異色なんだけど…引出しが多いと言うのも今更ですが…(笑)

13.予感  hyde:詞/ken:曲
これはまた…DUNEの曲群とは明らかに違う、爽やかでポップで鮮烈な印象を受ける作品。1993年9月発売の音楽雑誌の付録CDに収録された曲ですが、半年でこれほど進化するのかな? この後、1年を待たずしてメジャーアルバム「Tierra」が発売となりますが、むしろこちらに近い印象です。
まず、sakuraのドラムがかなり全開! これを聴いてしまうと、加入直後のレコーディングだったDUNEはやっぱり本領発揮には至っていなかったのね(笑) sakuraがパワーアップしたお蔭で、てっちゃんのベースも上手く絡んできてグルーヴ感が増してます。で、最後に怒涛のギターソロ! hydeもずっと歌ってますが、これはギターのためのコーラスってことでいいんだよね?(笑) これだけ長いソロなのに全く飽きさせず、フェードアウトしていく最後まで耳をそばだてて聴いてしまう。今聴いても満足な曲です。