SMILE   2004/03/31
次々と予想外の曲が飛び出してくる、おもちゃ箱のようなアルバム。それぞれの演奏を活かしたざっくりとした音作りは、「heavenly」にも似た、開放感のある瑞々しい印象。とにかく爆音の似合う音! 演奏家としての彼らの、ガツガツとした聴き所が満載です。ボーカルも太くて力強く、今回のサウンドには良く合っていますね。反面、「True」に代表される綺麗で完成された音が好きな人には、ちょっと取っ付き難いかも?
音のバランスとしては、復活後の他のアルバムよりドラムが大きく入っています。ギターも全体的に聴かせどころが増えているので、2人と比べて相対的にベースはちょっと下がった感じがしますね。また、弦管楽器やピアノをあまり使用せず、メンバー以外の音がほとんどキーボードや打ち込みだけなのも特徴的です。

そして。意外(笑?)なタイトルに負けず中身も凄いです。SMILEと言うよりむしろLOVE! ここまでLOVEなアルバムがラルクの歴史に登場するとは! 命名者のhydeさん曰く「愛という言葉は安っぽい」とのことで「笑顔」だそうですが、素直に「LOVE」でも良いんじゃないの?と思ってしまうほどです(笑) hydeさんは今回8曲の作詞をされてますが、最近のラルクの詞に付き物だった退廃や閉塞感はあまり感じられず、何かを確信した強さに溢れてます。
今後もこの路線が続くのか分かりませんが、再始動アルバムとしては心強いですねv

今から買うなら、もしくは2枚目なら、USA版がオススメ。コピーガードが付いていないため楽器の音がクリアで、正直なところ魅力3割増しです…。私は初めて聴いたとき…今まで聴いてた「SMILE」は何だったんだ!…と思いました(笑えない;)
ギターの艶、ベースの雄弁さ、ドラムの乾いた音、そういったラルク独特の味を楽しみたいならぜひどうぞv(追記:現在は国内版も通常CDになってます!)
注目曲

1.接吻  hyde:詞/ken:曲
タイトルの「接吻」は、そのままの意味とも取れるし、他者とのふれ合いを喩えているとも取れます。誰かと解りあい1つになれる感覚。それを「幻でいい」と言い切る歌詞は…強くなったね、hyde!(笑) や、hydeさんご自身の話とは限りませんが、この歌詞の主人公は相手の自分に対する気持ちではなく、自分の相手に対する気持ちを確信したんでしょうね。大変美しい歌詞です。
で、曲ですが、Aメロのゴリゴリしたサウンドと低く抑えられた歌声にドキドキしながら待っていると、気付いた時にはサビの高みへ…。聴き始めて最初のころはこの展開についていけず、あれ?いつの間に??って感じでした(笑) この辺の印象が私の中ではHYDEの「SWEET VANILLA」に似てます。浮遊感の表現が、シンセだったり高音まで上るベースだったりするのがラルクらしいですが、珍しくドラムは最初から最後まで一定のリズムを刻んでいて、それがこの曲を引き締めてますね。

2.READY STEADY GO  hyde:詞/tetsu:曲
再始動第1弾シングル! パンクっぽいシンプルな骨組みで、荒々しいのに正確なカッティングギターといい、低音域に響く堅実なリズム隊といい、ラルクではこれまでに見られなかった正しい王道路線(笑) しかし、こまごましたポップな装飾や広がりのあるコーラスワークはラルク以外の何者でもなく、ラルクらしい1曲。2年半振りに出すシングルでこういうことが出来るのが、凄いと言うか人を食ってるというか…(笑)
歌詞もこれまでに無いストレートで前向きな内容。アニメの主題歌になった所為もあるかと思いますが、ここは捻らず、彼ら自身の再開と再会に向けての逸る気持ち、と捕らえていいんじゃないかな? 「空回りする気持ちが叫び出すのを止められない」という1節は、当時のファンの気持ちにも重なり印象的。

3.Lover Boy  ken:詞曲
次から次へと楽器隊の聴き所が押し寄せてきて、凄いの一言に尽きます。最初から最後まで3人とも無意味にフルスロットル。ボーカルもそれに1歩も引かず、エロいんだか余裕なんだかいかがわしいんだか緊迫感タップリなんだか、ガッツリ噛み合ってます。思わず唸るか、あんぐりして半笑いになる感じ。私は後者(笑) とにかくカッコいい曲です。強いて言えば、ベースの音もっと大きくして欲しいかな。
「Lover Boy」というタイトルは、kenちゃんは「恋愛中毒な人」というような意味で付けたそうですが、実は「男娼」って意味もありまして(笑) 海外のファンサイトで「hydeが自らをLover Boyと称しているのがクール」って書いてあったんですけど、違うから!!(爆) 問題は、この歌詞そういう解釈も出来ちゃうってとこで…。

4.Feeling Fine  hyde:詞/ken:曲
え〜と…なんじゃこりゃ!(笑) とりあえず、初聴きでkenちゃん曲だ!と確信した人は少ないでしょう。明るくて元気で、ちょっと懐かしい昔っぽいテイスト。人にロカビリーって言われたんですけど、ロカビリー分からないし…このギターの音色がそれっぽい? ドラムのダンダンダダダっていうのは関係ないよね?(笑) ゴッドにこんなリズム叩かせちゃうkenちゃんて凄い、と思ったのですが、どうもユキさんのアイディアだそうで。いやぁ…。初めてアルバムを聴いていてこの曲が流れてきたときは、まだこんな新しい、キャラ違う(笑)こと出来ちゃうんだなぁって、場違いにも完全復活を実感しました。でも、単純に聴こえますが、音色の違う複数のギターやキーボード、ベースが違う旋律を重ねあう様は、きちんと設計されていて、とてもラルクらしい。
歌詞は、今回のアルバムではむしろ珍しい、明るいのに切ないラルク路線。ライブではhydeさんがまったく歌詞を覚えてくれず、「ラララ〜♪」と誤魔化しては、ただでさえ盛り上がるこの曲をいっそう盛り上げてくださってます♪

5.Time goes on  tetsu:詞曲
アルバムにピッタリ嵌った可愛らしい1曲。メロディもカワイイし、使われている音もかわいい。曲中に敷きつめられたアコースティックギターの素直な音色、印象的に挿入されるトイピアノの幼さは、純粋さの象徴。上下するベースと、行きつ戻りつするドラムのリズムが、主人公の揺れている気持ちを感じさせます。デモテープのてっちゃんの「甘い声」を表現しているらしいhydeさんのボーカルですが、甘くなりきらないのは多分、意外とこの曲が高音ばかりで構成されているからかな? ちょっと辛そうなところが、切ない歌詞には合ってます(笑)
ギターは、アコギがkenちゃんでエレキギターはてっちゃん! ライブでは高音まで出る6弦ベースでソロ部分を弾かれてましたv

6.Coming Closer  hyde:詞/ken:曲
イントロのこの何かが始まりそうな感じ、たまらなく期待感を煽られますね。ドラマや映画の主題歌のよう。歪んだギターの音色にストリングスを贅沢に挿入したサウンドは、大仰で悲愴なほど。高音まで地声な所為か、ボーカルは硬質でどこか切迫感を孕み、添えられたコーラスは緊張漂う囁き声。こんなにドラマティックなのに、サビのリズムはダンサブル…って、なんじゃそりゃ(笑) 不思議な曲ですが、ラルクらしくてkenちゃんらしい、緻密で華のある曲です。長めのギターソロにもぜひ注耳。
歌詞は環境破壊がテーマだそうで、こんな素敵な曲に色気の無いテーマでちょっとガッカリなんですけど(笑)、たまにはこういうテイストもいいですね。

7.永遠  hyde:詞曲
ラルクでは珍しい、正統派ラブソング(笑) 原曲は4分の4拍子だったものを岡野さんのアイディアで8分の6拍子にしたそうですが、その所為でゆったりした中にも流れのある、ユキとてっちゃんの特長を引き出す曲になったのでは。ギターは少しずつ盛り上がっていって、ソロ部分で突如爆発! 溢れ出す感情をそのまま奏でているような音は、kenちゃんの音としては有りそうであんまり無い。どちらかと言うと地味な印象(笑)の曲ですが、3人の演奏のいいところが出てます。
で、歌詞の「永遠を願う」という1節に「winter fall」を思い起こしちゃうのは私だけですかね? あの時は、あんなに儚くて切なく感じた言葉ですが、ここで歌われている「永遠」は切ない中にも決意がある、自分はこの感情を手放さないぞって強さを感じます。この主人公は、今この瞬間が切ないくらい幸せなんでしょうね。いい曲だ〜。

8.REVELATION  hyde:詞/yukihiro:曲
シャッフルのリズムに踊らずにいられない1曲。なんでしょう? このリズムの所為か、hydeさんの歌メロの所為か、分厚いギターが気持ちいいからか、歌詞の割りに破壊的な印象は薄いですね。むしろ楽しい、悪魔の啓示に踊り狂う感じ。yukihiroさんの作曲の中ではちょっと可愛げがあるというか…(笑) 左右のギターは全く同じ音を奏でていて、右はユッキー、左はkenちゃんが弾いてます。いかにもデジタルっぽいキーボードの音も、逆に新鮮でいいですね。キーボードソロもあります。
「42か月の永遠に感謝〜」から始まる歌詞は、一時、休止中のことを歌ってるのかと話題になりましたが、違うそうで。聖書の「ヨハネの黙示録 13章」が元ネタみたいですね。でもその黙示録が勝手に休止中のことに引っかかってるよ!(笑) hydeさんは意図してないとしても面白いくらい被る部分があるので、興味のある方は読んでみて下さい♪

9.瞳の住人  hyde:詞/tetsu:曲
再始動第2段シングルになった名曲バラード。こういう、出来上がったときから「名曲です」って顔したバラードはtetsuさんの専売特許ですね!(笑) オケは3年くらい前に録ってあったそうですが、弦楽器やピアノ、アコギの入れ方に「Anemone」辺りの雰囲気があります。また、冒頭とソロで使用されている暖かい音色のギターは、この曲独特。全体的に透明感と柔らかさのある音を使用し、たくさんの旋律を美しく組み上げていて、このアルバムでは異色な雰囲気ですね。ありえないくらい高音に達するサビに心配しましたが、ライブではコツを掴んだのか易々と歌われてましたv 美メロだ〜。
歌詞に関しては、発表時hydeさんが「最近ハッピーエンドにしか惹かれない」と話されてましたが、これはまさにその通りの歌詞。ただ、ハッピーエンドって物語の終わりじゃなくて、本当に「登場人物たちの終わり=死」を暗示してません?? 「雪のように空に咲く花」は桜かと思いますが、桜のもとで死ぬって言うのは、西行の有名な歌にもあるように幸せな死の象徴。たくさんの季節をすごして、時には意に反して離れなくてはいけないことがあっても、いつも寄り添って、最後は一緒にハッピーエンドを迎えましょう、って凄いラブソングなのだ!多分!(笑) 美しい日本語詞です。

10.Spirit dreams inside  hyde:詞曲
これだけ2年半前に発売された曲ですが、いい感じに最後に収まりました。さすが映画のエンドロールで流すために作られただけあって、再始動アルバムの最後に相応しい、この先に続く物語を夢想させるような曲調ですよね。歌詞の内容とは全然関係ないんですけど、この乾いたサウンドと空に広がっていくようなサビの所為で、私の中では勝手に旅立ちの歌になってます(笑)
ライブではなかなか合わない難曲となっているようですが、何と言っても理由はリズム隊がリズムを取ってないという…(爆) この曲、ベースがずっと裏メロを弾いていて、ドラムはABメロと間奏では勝手に(笑)、サビではベースにピタリと寄り添って複雑に変化しまくってます。強いて言えばアコギがジャカジャカとやってるのがリズムを取ってくれそうなんですけど、CDでアコギ弾いてるのは…hydeだ〜! hydeさんが歌いながらちゃんと拍取ってくれないからずれるんだよ!…って、やっぱり無理?(笑) 揃った時のグルーヴ感が最高なので、懲りずにまたチャレンジして欲しいですv