Suite November   2002/11/20
8曲+αという曲数ですが、1曲1曲がまとまっていて完成度が高く、聴き応えは抜群! 卓越したポップセンスとメロディセンスが隅々まで投入され、初のオリジナルアルバムにして、ベストアルバムのような充実感漂う作品です。

音は意外にも、打ち込みを多く使用したちょっとデジタルな感じ。これが冷たい無機質な方向に働かず、ひたすらポップに聴こえるのがさすが(笑) 沢山の音色や強弱を自在に使い分けて、豊かな表情を付けています。ロックでハードでカッコいい曲もありつつ、全体の印象としては、キラキラとして可愛くてキレイな雰囲気ですね。
ボーカルは深みがあって表情豊か。まだ安定感に欠けるところもありますが、ファルセットの優しさや低音の甘さなど、声そのものの魅力は人を惹きつけるのに充分。曲によって様々な表情を見せてくれますv
歌詞は大きく、現状に対するネガティブな気持ちを歌ったものと、未来に対する希望を歌ったものに分けられるかな? 一聴しただけではロマンチックに聴こえる詞も、読んでみるとてっちゃんのリアリストな部分がチラチラ覗いてるかも…?
注目曲

1.WHITE OUT  TETSU69:詞曲
てっちゃんがギター、ベース、コーラスに大活躍v(笑) 特にベースは、こちらではあまり弾いていないので、この唸りっぷりに「やっぱりてっちゃんのベースはイイ!」と再確認しちゃいますね。メインは生音でバンドらしい音構成ですが、メロディアスでポップで爽やかで、てっちゃんらしい雰囲気。シングルバージョンのバラード然としたアレンジも美しいですが、オープニングならこっちかな。
歌詞は、失恋の歌なのかな? 切ない内容なのに、このメロディがすっと抵抗なく胸に滑り入れてきて、あとからキュっとなる感じ。

2.wonderful world  TETSU69:詞曲
幸せな恋心を素直に表現した曲。弾んでいるリズムは、主人公の気持ちそのものですね。優しいメロディで、気構えなく聴くことが出来ます。
ギターとピアノは生音っぽいけど、他の音はドラムも打ち込み。きらきらピコピコした可愛い音にてっちゃんの甘い声が乗っちゃって、もう凄いトキメキ満載な世界v ファーストシングルだったので、まずこの曲調に衝撃を受けた方も多いのでは? てっちゃん100%だと、ここまでポップな曲も作れちゃうらしいです。

3.Pretender  TETSU69:詞曲
前曲と打って変わってロックでストイックな雰囲気。でも音はゴージャスですね。重ねたギターに緊迫感のあるストリングスの音色。一貫して入っている無機質な打ち込みのリズムが、曲を引き締めています。これ、てっちゃんのベースで聴きたかったな〜。派手になり過ぎちゃう?
歌詞は…凄いてっちゃんぽい(笑) 自分に厳しく自分に正直に生きるのはすっごい苦しいことだと思うけど、それがてっちゃんの生き方なんだよね。そんなに力を入れた歌い方じゃないので、それが逆に迫ってくる感じですね。

4.TIGHTROPE  TETSU69:詞曲
意外にも珍しい、ロマンティックでストレートで激しい恋愛詞。ボーカルもどこか切迫感が合って、少し荒めの歌い方が歌詞に合ってます。
曲は、キャッチーで劇的なメロディに激しいサウンドが気持ちいい! 緊張感に張り詰めた空気に満ちています。この曲にはKAZさんがアレンジとギターで参加されているのですが、生音を補強して雰囲気をだすような打ち込みの入れ方は、KAZさんらしいですね。あと、ギターが…キレがよくてカッコイイなぁ。TETSU69の作品にはギターがカッコいい曲も多いですが、その中でも光ってます。

5.蜃気楼  TETSU69:詞曲
カッコイイ! すごいインパクトのあるロックな曲で、アルバムの中ではアクセントになってます。サウンドは生音に打ち込みを重ねて、厚くてノイジーで破壊力満点。特に、ご本人自ら弾かれているベースは凄い! ベースソロは鳥肌が立ちますね。ボーカルは力強くて、起伏の激しいサビは迫力! 最後の搾り出すような声は、思わず息を詰めて聴いてしまいます。
歌詞は、ネガティブとも取れますが、冷静過ぎるだけな気もします。てっちゃんが普段思ってたことなのかなって感じ。シチュエーションは分かりませんが、言葉自体は率直で自然に入ってきます。「手をつないでいる相手を間違えてることに気付く」って一節が、的を射た表現でちょっとぎょっとしました。

6.SCARECROW  TETSU69:詞曲
曇り空のような薄い影に包まれた曲。ベースもご本人が弾かれてますが、珍しくポツリポツリと途切れるようなフレーズ。淡々と奏でられるギターに止められない時間を、サビで重なってくる音色の違うギターに引き絞るような感情を感じます。間奏で繰り返し挿入されるピアノの旋律も印象的。
歌詞も幻想的で不思議な世界。タイトルのSCARECROWは無力なことの喩えなのかな? それとも立ち尽くしてるってことの喩え? 「空を仰ぐこの瞳に映る光は大地へと伝ってゆく」という一節は、とても綺麗で切なくて印象的。

7.empty tears  TETSU69:詞曲
珍しい3拍子の曲。弦楽器を歌伴のメインに使っていて、それだけ聴くとクラシックのような雰囲気ですが、打ち込みのリズムも凝っていて面白い。歌メロと弦のゆったりしたメロディの中で、細かいリズムと無機質な音色、そして盛り上がりに合わせた強弱がひっそりと焦燥感を煽ります。
ボーカルはブレス音が入るような録り方で、丁寧に歌われていて表情が豊か。切ない歌詞にじっと浸ってしまいますね。

8.15 1/2 フィフティーンハーフ  TETSU69:詞曲
タイトルの「フィフティーンハーフ」はてっちゃんがバンドを始めた年齢だって聞いたんですけど、本当? 確かに歌詞には、ご自身の音楽活動を歌っているのかなって思う部分がありますが…こんな気持ちで音楽をやってくれているなら、ファンは嬉しいです。…ずっと見守ってるよ?(笑)
曲は、Aメロは割と聴かせるモードで、サビで一気に世界が開ける感じ。ギターソロも高みに突き抜けていくイメージで、ひたすら晴れた空のような、清々しい透明感のあるサウンドになっています。生音と打ち込みが半々くらい入っていて、かなりの音が重ねられていますが、全然重たくない。逆にそれが奥行きや広がりを感じさせます。最初と最後の曲の印象が、このアルバムをポップで聴きやすいイメージにしてるよね。最後に相応しい、光のある曲。